「宇宙家族ロビンソン」は、1965〜68年にアメリカで放映されたSFドラマです。
日本では1966年から放映。まだ国産ドラマすら少ない時代、宇宙が舞台のSFドラマとして大きな人気を博しました。原題は”Lost in Space”。
 
制作はその世界では有名なアーウィン・アレン。
アーウィン・アレンは、同時期に「原子力潜水艦シービュー号」、「タイムトンネル」というテレビSFドラマを制作、さらに70年代に入ると映画界に進出。SF風味のスペクタル映画「ポセイドン・アドベンチャー」、「タワーリング・インフェルノ」を手がけ、パニック映画というジャンルを作りました。しかし、その後、巨額を投じながら惨憺たる出来の愚作を連発するようになり、最後は資産を失い1991年に死去しています。
 
「宇宙家族ロビンソン」はこうした興行はったり屋のアーウィン・アレンの個性が出た、怪しい快作です。
 
 
【ストーリー】
人類初の惑星間移民に出発するロビンソン一家が、トラブルから宇宙をさまよい、毎回怪事件に遭遇します。当初は硬派SFとしてスタートしましたが、中盤以降コメディの要素が強くなります。それが放映当時の子供たちの歓心を買いますが、逆にSFドラマとしての本筋を見失っていったのも確かです。
 
 
【ドクター・スミス】
アーウィン・アレンの当初の構想は、50年代に人気のあったホームドラマ(幸せな家庭の些細なできごとを描く)の要素を宇宙空間に持っていくことだったと思われます。しかしコンセプト提案を受けたTV局は、緊迫したドラマとするため悪役の設定をアレンに要求します。そこで急遽つけ加えられたのが家族ではない邪魔者、ドクター・スミス。
 
ドクター・スミスを演じたのは怪優ジョナサン・ハリス。
小心なくせにずるい間抜けな悪役キャラクターはジョナサン・ハリスの素晴らしい名演で他を圧倒。「宇宙家族ロビンソン」そのものをコメディに変えていってしまいます。「宇宙家族ロビンソン」の事実上の主役はドクター・スミスだったという評価は洋の東西を問いません。
 
しかし日本での人気は声優、熊倉一雄さんによるところが大です。脚本なのかアドリブなのか「このすっとこどっこい」などという時代離れした毒舌が大好評でした。
なおジョナサン・ハリスはアニメ映画「バグズ・ライフ」、「トイ・ストーリー2」の声優としても活躍しましたが2002年87歳で亡くなっています。ちなみに彼がドクター・スミスを演じたのは55歳の頃です。
 
ドクター・スミスの本名はザッカリー・スミス(Doctor Zachary Smith)。しかし日本語吹き替えではザックレーと発音されていました。
 
ドクター・スミスが何の博士号を持っているかは映像を見てもはっきりしません(笑)当初はロボット「フライデー」の調整をしており工学博士のようですが、ストーリーによっては聴診器を持ち、いいかげんな診断を言う医者になっている回もあります。
なお、英語版ではロビンソン船長とその奥さんモーリンも博士であり、ドクターです。
 
 
【フライデー】
「宇宙家族ロビンソン」においてドクター・スミスと人気を二分するのが、
忠実なロボット、フライデーです。
 
「B9モデル・マーク3型気圧観測ロボット」が正式名称。
英語版では単にRobotと呼ばれているだけですが、日本では初放映当時、ネーミングの募集が行われました。その結果、「ロビンソン・クルーソー」に登場する従者フライデーの名前が使われることになりました。
 
フライデーのデザインは日系アメリカ人、ロバート・キノシタによるものです。ロバートは50年代のSF名作映画「禁断の惑星」に出てくるロボット、ロビーのデザインでも知られています。
 
フライデーは中に人間が入り「着ぐるみ」として動いていました。中に入っていたのはボブ・メイという人で、「宇宙家族ロビンソン」ファンの間ではなぜか(笑)ボブも人気があります。
 
フライデーは危険を察知する能力があるようで、次の台詞をいつも叫びます。
「警告、警告!」「危険、危険!」ほかに、ドクター・スミスに意地悪な質問されたときの「それは計算されません」という珍妙な(日本語になっていない)受け答えも忘れられません
 
 
【なぜ店名がドクター・スミスなの?】
ここまでお読みの方のなかには、なぜ悪役の名前を店名にしたのか疑問に思われる方もいるでしょう。ひとえにこのドクター・スミスというキャラクターが大好きだからです。
 
「宇宙家族ロビンソン」のリーダーである父長のロビンソン船長は、
トラブルから宇宙をさまよい始めたジュピター2号をなんとか目的地の
アルファ・セントリー星に向かわせようとします。
それに対し、怖がりのドクター・スミスは地球に帰ろうと主張し、
毎回宇宙人と勝手に交渉して地球への帰還を画策します。
 
物語では船長が正義、ドクター・スミスは悪という設定ですが、
果たして本当にそうでしょうか。
視点を変えると船長は無謀な冒険主義者であり、
ドクター・スミスは冷静なリアリストです。
 
極端な自己都合主義、小心な日和見、
そうしたドクター・スミスのキャラクターにこそ人間の本質があります。
少なくとも私(マスター)はドクター・スミス的な人間です。
苦境に追い込まれ悲鳴をあげながらも、
常にシニカルな笑いを提供するドクター・スミス──
そういう者に私はなりたい、のです。